終末期医療を巡る現状と問題点
終末期医療を巡る現状の中で特筆できることは、非常にあいまいな状況で医療が行われているということです。
どういうことかというと、終末期医療は患者の意思を確認したうえでできる場合もありますが、そうじゃない場合もあるということです。
患者はすでに意識を失っていて、自分で判断したり指示を聞いたりすることができない状況にあります。
でもそういう状況にあっても、終末期医療を実践するかどうかの判断を迫られる状況に立たされるのです。
現状では、患者が意思表示できる場合はそれを尊重し、患者が意思表示できないときは家族の意思が尊重されるようになっています。
これは当然といえば当然かもしれませんが、本人が意思決定を行って終末期医療を選択したわけではないので、人によっては問題だと主張する人もいます。
ともかくも終末期医療の現状はとてもファジーな状態で、患者の意思が確認できるときは、そのまま患者の意思に従って終末期医療をするかしないかが決められ、患者の意思が確認できないときは、患者の意思を家族が汲み取った場合は、家族の意思が尊重されることになっています。
もちろんその場合、病院側と家族との十分な話し合いがもたれ、お互いに納得したうえで最善の治療が行われることになっています。
終末期医療の問題点として最たるものは、倫理的な問題でしょう。
つまり、患者の意思が確認できないのに、家族が意思を汲み取ったからといって終末期医療を実施していいのか?ということです。
これについてはさまざまな意見や感じ方があり、どれが正しいと一概に言うことはできませんが、今後も主要な問題点として検討を重ねていかなければなりません。
終末期医療のメリットは、本人を苦しめることなく、なおかつ余生を安らかに過ごさせながら逝かせることができること。
このことが素晴らしいと考える人は多く、そうした人たちによって終末期医療は推進されていますが、しかし逆の味方もあるわけです。
つまり、難病だからといって治療を放棄するのはどうかとか、患者が意思決定したわけではないのに勝手に終末期医療を選択していいのかという意見です。
どちらの意見も一理あるものであり、どちらが正解ということではなく、これは価値観の問題であるといえます。
この価値観の問題をどのように決着させるか、それが今後の終末期医療の課題です。
そして患者が意思決定できる間に、速やかに終末期医療について話し合っておく必要があることを周知徹底させることも必要でしょう。